top of page

​BUCK-TICK

  2021年の夏のこと。Spotifyがアンタこれも好きでしょとばかりにこれまで触れてこなかった90’sあたりの全盛期ヴィジュアル系( X JAPAN、LUNA SEA、DIR EN GREY、GLAY etc…)を聴かせてきて、そこにある曲が紛れ込んだ。”赤 黄色 向日葵…橙 群青 紫陽花…”と繰り返される歌詞の奇妙さ、SF的でかっこいいのに廃墟的な怪しさ満点のサウンドに載る、若い頃のがっちゃんに似てるけど何というか…もっともっと色っぺえ声。「エッなにこれだれ…!?!?」とおもわずその場でリピートボタンを押しつつアーティストページに飛んだ、それがBUCK-TICKとの出会いだった。存在は知っていたけど、その時初めて出遭った。

 

  それからしばらくはその「月世界」や「ドレス」…ダークでゴシックなイメージだったのだけど、あるときまたもSpotifyがやってくれた。スピーカーから突如沖縄テイストなお祭りサウンドが流れ出したのだ。陽気でロックでありながらも、十分すぎるくらい祭祀的な雰囲気を纏った「memento mori」それから、どこか砂漠のある国の魔女とか魔術師とか錬金術師のようなイメージのある「coyote」に脳内はすっかりジャックされてしまった!!この2曲が収録されているアルバム『memento mori』はハードロック色(わたしの大好物)が強いアルバムで、BUCK-TICKってこんなのも作るのか。しかもめちゃくちゃきもちよくかっこいいじゃないか!!とわたしのオタク精神呆気なく着火。昔のから最近のものまで、ざーっと聴きあさり、そして気がつく。…昔のもいいけど、最近のものが良すぎる!ということに。

 GACKTもHYDEも愛してる。でもそれは常に過去を追いかける行為だった。若かりし頃の彼らが、彼らの生み出したものが好き。その気持ちには幸せを感じつつも絶対に最高地点に居合わせることはできないという悔しい思いが常に伴う。それなりに歳を重ねた人を好きになった時点でわかっていたことでもあるし、そういうものだと諦めていた。ところがどっこい!!!!BUCK-TICKはわたしが心を捧げたその2人よりもさらに年上だけれど、最新作がいい。もちろん昔のあっちゃんはめちゃめちゃ、めちゃめちゃ美しい。もはや気持ち悪くなるくらいに美しい。今井さんもヒデもゆーたんもアニイもそりゃ若い頃もかっこいい。かわいい。やっぱりせめて20年くらい早く生まれて、一緒に歳を取りたかったきもちには変わりない。だけど、まあいいかと思えてしまうくらいに、今もなおかっこいい。作品はどんどん深みも切れ味も増している。もはやワクワクしかできないのよ…。 

 

 さて、まだ無知ではあるけれど、今現在感じてること、残しておこうと思う。

 

①サウンド面

BUCK-TICKのWikipediaを見るとジャンルの項目が以下の通り。 

ロック、ニュー・ウェイヴ、ビートロック、オルタナティヴ・ロック、ポストパンク、ゴシック・ロック、インダストリアル、テクノポップ、ヘヴィメタル、エレクトロニック・ボディ・ミュージック、ポップ・パンク、ドラムンベース、アンビエント、エレクトロニカ、グランジ、シューゲイザー、ポストロック、ブレイクビーツ、ハードロック、昭和歌謡 

 

 音楽における”ジャンル”って結局かなりフッワフワしているし、Wikipediaだしというのは重々承知なのだけど、わかりやすいなとおもったので引用してみました。例えば~ロック、~メタルが並んでるバンドはある。それでどんな方向性なのか大体なんとなく掴めたりするけど、BUCK-TICKはこの通り…多様すぎないか。少なくともわたしにはこれをみてもどんな音楽の人たちなのか掴めない。そしてこの多様性は文字上の話ではなく事実なのです。聞いてみればわかる。アルバムごと、いや曲ごと、もはや1曲の中でも絶えずくるくるいろんなものを横断し続ける。…というかそもそも自分たちの属するジャンルを定めず風の向くまま進んでいくのがBUCK-TICKなのだ。前掲の『memento mori』みたいにロックかと思えば「舞夢マイム」とかもろ歌謡曲なのもあるし「BABEL」のティトゥン!!て音はまるでチルボドだし「ノスタルジア-ヰタメカニカリス-」の語りはボウイの「it's no game」を思い起こす、はたまたわらべうた感じたり…でも決してそのままではなく、それらがひっちゃかめっちゃかに、でもひとつの形に融合したもの。しかもしっかりポップに。

 BUCK-TICKの作曲はほぼギターの2人が担っているのだけれど、今井曲はサーチライトとかネオンとか金属に反射する光とか、どこかしら人工的なびかー!!っていう光、星野曲は曇りの日や月の明かりみたいなぼんやりとかすかな光のイメージ。BUCK-TICKの示す光は決して太陽ではない。青空が邪魔をする、太陽二殺サレタ…言葉がなくとも音だけでも。

②歌詞・世界観

 キャッチーなメロディに載っていても、歌詞はわかりやすくない。引用や流用が溢れていてわたしなんぞでは言葉すら「?」なことも多々。言葉やそのソースを調べても、まだわからない。造語もあるし、ニュアンスはつかめても正解はわからない。くうう!わかんねぇ!!っていうところに悦びがあるんですよ…!久しぶりにそういうわからなさにぶち当たって、知りたい!って気持ちになってます。雑誌とかにはある程度オープンにしてくれるしファンの方々も考察をあげたりするからひとまず曲を受け取って、それから文字の情報にアクセスして…ってプロセスが踏めるのも良い。「ゲルニカの夜」や「DADA DISCO」とか、すでにある概念や表現を借りてきて1曲の中にぎゅっと世界を詰めるということもBUCK-TICKの得意技。ただ娯楽として楽しむだけじゃなくて、思考のきっかけにもなる音楽といいますか…美術館にいる時と近い感覚になれる音楽。こういうのばかりがあふれていたら、それはそれであれですが、ここのところの日本のポップミュージックの中には知らない語彙や概念に出会うきっかけになる音楽、絶対なんか意味があるよなあって日常生活では働かない脳の領域を突かれる音楽ってなかなか無いと思うんです。でもあくまでもコアに傾倒しずぎることはなく、ポップスであり続ける。難しいのだけじゃなくて、”21st cherry boy~too young to die~”といい、ちょいちょい挟み込んでくる馴染みのあるもののパロディにはニヤリとしてしまうし、”希望の都”と書いて”ジゴクノハテ”と歌っていたり、言葉遊びも楽しい。

 結構作詞者作曲者の組み合わせで雰囲気も違う。一番多いのは櫻井&今井ペアだけど、オール今井曲のピリッと感、星野&櫻井ペアの温度の低い哀愁、このバラエティがあってのBUCK-TICK。

 

③ライブ

 この人たちの音楽は音源もいいのだけれど、何よりライブ(まだ行けてないけどね、映像で見てるだけだけどね)。ポジションはお決まりで、前方両脇にギター今井寿と星野英彦、中央にボーカル櫻井敦司、後方にドラムヤガミトール、ベース樋口豊と並ぶのだけれど、近年は特にライブの最後の最後を除き、メンバー同士の視線が合うことがほとんどなくて、それぞれが観客と向かっている。アニイのカウントが進行の全て。だからってバラバラなわけでは決してない。釘付けにならざるを得ない手指の先まで美しいあっちゃんのパフォーマンス、足上げダンスや挑発的な表情…派手に立ち回る今井さん、おだやかに微笑みをたたえて、けどなんだかんだマイペースに動き回ってるヒデ、前方3人がどんなテンションでも黙々とビートを刻むアニイ、バンドをよーく観察しつつサービスも忘れないユータ、それぞれ違うスタンスでステージに立っているように見えるのに、怖いくらいに一体なの。奇抜な演出や派手なことはしないけれど、セットリスト、SE、照明使いは秀逸だし、歌が、演奏の表現が一番と言い切る彼ら、聴覚はもちろんのこといつもその身一つで視覚にも訴える表現をやってのける。前方の3人に目がいくけれど、後ろのリズム隊兄弟あってこそ。歳を重ねるうち数々のバンドが化粧を落とす中、しっかりメイクもそのまま、衣装も毎回素敵!仕込まれたガーターベルト、太腿が透けてる総柄フリフリパンツに厚底ブーツ…ドンドンイカしてきてる。最高。

 「マイナス×マイナスでプラスになれば」なんて櫻井さんは言っていたけど、わたしのようなひねくれた人間は、ただただ明るい前向きな励ましにはどんなに言葉の上で寄り添っていてくれるようだったとしても心のシャッターをガラガラーとしてしまう。BUCK-TICKはそうっとそうっと闇の方から寄ってくる。闇だけど、死ではなく生。生々しいまでの生で溢れた闇を身に纏ってやってくる。純粋ではない。爛れている。狂気じみている。けれどそれゆえに一番柔らかくて傷だらけなところに触れることができる。傷口に真水じゃ滲みるでしょう。清くない方が緩やかに近づける領域というのがある。

 

 わたしのお守り的存在はこれまでデヴィッド・ボウイだった。彼は空にいる。空にいてもなお、力を借りられる作品をのこしてくれてるからそれはそれで心強いんだけれども、今同じ時を生きて声を姿を届け続けてくれるということ、そしてやっぱり同じ言葉を使う人であるということがこんなにも励みになるとは。おとなになればなるほど何かを信じることはむずかしくなる。年数が全てではないけれど、35年間ずっと同じメンバーで、表面的にはいろいろ変化していても変わらない。毎回より尖ったものを出し続けてくれて、そして全員がこのバンドでできるだけ長く音楽を届け続けるよって言ってくれてることって信じられるレベルが半端ない。大袈裟でなくこの人たちがいる世界であれば明日も生きてみようって思えるし、彼らに会ってから、死にてえ~って気持ちになったときに”いやBUCK-TICKに出会ってしまったわたしがこんなことで死んだらBUCK-TICKに失礼だから死ねない。死ぬくらいなら逃げていいし、しあわせになるんだから!!”ってなるようになりました。ね、最強のお守りでしょう。

​DISCOGRAPHY

 コンピレーションやライブアルバム、ベストはちょっととりあえず置いておいてオリジナルアルバムとシングルだけピックアップしました。上から新しい順に並んでいます。熱量・情報量明らかに偏っておりますが、そこはご愛嬌…さーせん!!これから少しずつ加筆してゆきます。

 ※リリース情報(発売年と収録曲)に関しては全て公式サイト参照。曲名の後は表記がなければ[作詞者/作曲者]です。

©2022 Phantom  flutters  in a dream 

当サイトの無断転載・転用を禁じます。

bottom of page