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22nd ALBUM『ABRACADABRA』

2021.09.21


01. PEACE [今井寿]

02. ケセラセラ エレジー [今井寿 / 今井寿]

03. URAHARA-JUKU [櫻井敦司 / 今井寿]

04. SOPHIA DREAM [今井寿 / 今井寿]

05. 月の砂漠 [櫻井敦司 / 星野英彦]

06. Villain [櫻井敦司・今井寿 / 今井寿]

07. 凍える Crystal CUBE ver. [櫻井敦司 / 星野英彦]

08. 舞夢マイム [櫻井敦司 / 今井寿]

09. ダンス天国 [櫻井敦司 / 星野英彦]

10. 獣たちの夜 YOW-ROW ver. [櫻井敦司 / 今井寿]

11. 堕天使 YOW-ROW ver. [櫻井敦司 / 今井寿]

12. MOONLIGHT ESCAPE [櫻井敦司 / 今井寿]

13. ユリイカ [櫻井敦司・今井寿 / 今井寿]

14. 忘却 [櫻井敦司 / 今井寿]


 キラキラしたインストM01で始まる最新アルバム、いつもながらかなりバラエティに富んでいるけれど曲順がなめらかなのでさらっと何周もしちゃう。でも内容は全くさらっとしていません。もちろん全部がシリアスではないけれど、 明るい街に潜む闇を描いたM03をはじめ、これを言いたいというテーマや憤りがはっきりとあった上でポップに落とし込まれている曲も複数収録。


 M04はピンク・フロイド「Julia Dream」から着想を得たそうだけれど、どちらかというと歌詞やシタールっぽいサウン ドはBeatles。いずれにしてもサイケデリック。冒頭のカーンって音が好きすぎる〜。


 同名の童謡、月の砂漠がモチーフで果てのない砂漠をひたすらにゆく2人の”そうするしかない”という覚悟とともに当てどない虚しさが漂うM05もまた異国です。


  自分のパートをそれぞれ作詞するという分業で作られたM06、あっちゃんのテーマはネットにおける誹謗中傷で、特にそれを擦り合わせたわけではないのに今井さんの語りが絶妙にマッチしている。あっちゃんが語ると演劇的になったりするんだけど、この人は本当にカラッと淡々とポップに言葉を連ねる。でもそのポップさが返って不気味さを助長し ているしだんだんスローになってぐずぐずに溶けていくような終わりかたの気持ち悪さがまた...。


 M07は自傷がテーマ。突き放していて優しくはないのかもしれないけど、ダメとは言わず、よくはないけどそうすることでしか保てないならしてもいい、許すよというBUCK-TICKらしいスタンスを感じる。にしても”凍える”とは。流石の言葉選び。痛いの嫌いだからリスカの経験はないけど、心がぎりぎりの夜のあの感情、悲しいでも寂しいでも言い表せない、しいていうなら寒いが1番近いと思っていたあの気持ちはそうか”凍える”だったんだなぁって、ぴたりとはまる言葉が見つかると少し楽になるよね。シングルバージョンよりも更に冷たく凍えるサウンドです。


 「Cuba Libre」と同様最初はこってり歌謡曲すぎて聴けないかも…と思ったM08も今となっては大好き!男女の掛け合いをわかりやすく歌い分けずコーラスの高低で表現しているのがいかにも〜とはならない絶妙な匙加減。


 この曲を境にM11まではポジティブでパワ フルで強気なナンバーが続きます。もともと強いのにアレンジャーのYOW-ROW節が効きまくってなおさらパワーアップ!


 そしてM12。後ろ向きに見えて沈んでいて、だけど死ぬのは怖い生きていたい、そんなあっちゃんのシェルターソング。 "パパママ お願いね、僕のこと忘れないで" 逃げていいというメッセージはもちろんのこと、逃げる、 でも覚えていて欲しい、忘れないで愛していてという感情まで丸ごと認めて歌う優しさ。それ を決して暗くない舞い上がるようなメロディに載せて...月並だけれど、大人も子供も、必要な ひとに届いて欲しいと改めて心から思う。


 シンプルにLOVEとPEACEを叫ぶM13はアルバムタイトルでもあり疫病退散の呪文でもある”abracadabra”が入っているまさにこの時代のお守りナンバー。アルバムの製作中、コロナに表現を邪魔されたくないという気持ちがあったようだけれど、最後にこの曲を残してレコーディングもストップしたタイミングで生まれている。今井さん曰くなんかスカッとしたやつ。あっちゃん曰く、後ろ向きすぎてもいけないけど、前向きすぎないように。そこが信用できるのだ...


 アルバムラストM14では通り雨や虹...何気なく忘れ去られていくものたちと重要だと深刻に捉えてしまう物事、ありとあらゆるものたちがおなじ線上に並んで、すべてただ在るものだということに気がつく。夕方の光の差す時間にうっ かり車の中で再生しちゃったりすると尚更、本当に目に入るすべてが愛おしく思える。


 最後をM13にするかちょっと揉めたらしいけど(M13はM01を解体して作られていて歌詞にもpeaceが入ってるのでくるっとループするようにできる) この曲が最後にあることでスッとクールダウンするというか、この曲はここにしか在れなかったはず。音を止めてこの余 韻を楽しむもよし、おかわりしてM01に戻るもよし。



「ABRACADABRA ON SCREEN」

2020年コロナ禍を受け、ツアーの代わりに開催されたスクリーンコンサートの映像。この時の「舞夢マイム」の映像を見 て、あっちゃんの身ひとつでの表現にすっかり虜になりました。この時衣装もみんなとっても素敵なのよ...!所々用いていられているCGが最も生きているのはイントロの「Peace」と「ユリイカ」。この曲をお守りとして過ごしてきた人にはLove Peace Yeahの文字が降り頻るシーンはなんだかグッときてしまうのではないかしら。


 「凍える」ではあっちゃんが自分で自 分にトントンしているのだけど、そういう夜にこれからはこの曲が隣にあるなと思えたり。「凍える」と「忘却」は照明使いも素晴らしい。


 アルバム外の曲では「FUTURE SONG -未来が通る-」の強気な今井語りに強めに背中を押されたり「Luna park」でキラキラな世界に誘われたり、104分があっという間。近年のライブではお決まりとなりつつあるラスト「世界は闇 で満ちている」→「New World」の並びも一層優しく響きます...。


 それにしても無観客で収録されていることを忘れかける。 若かりし日のビデオコンサートや無観客ライブの経験が生きているのでしょうね。





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