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230120トリビュートアルバムを考える2

前回、DEAD ENDのトリビュートを聴いて、今まで好んで聴いてこなかった"トリビュート"に初めて感激した!というところまででした。


で、最後に引用したMORRIE×清春の対談では、日本においてアーティストが自分のルーツ=影響を受けたアーティストを言わない・あるいは事務所などの規定により言えない、それってどうなの?ということが話題になっているの。海外ではオープンにされているけど、日本ではそこを隠す風潮があるんですって…。


彼らは①ルーツにこそなぜ自分が音楽をやっているのかというアティテュードがあり、そこを堂々表明するのはかっこ悪いことじゃないし、それが本質だということ、②それを隠す風潮になっているなら、俺たちが言っていかないといけないということと、③トリビュートアルバムはそういうルーツにたどり着くための参考書になりうるよねという話をしている。


アーティストが実際のところどれだけ自分のルーツを言うか言わないか、言えないかは、わたしはわからない。でもそれを読んで、トリビュートって今の時代において音楽に深く浸るのにめちゃくちゃイイきっかけじゃん!って思ったのです(遅いよー笑)。



この記事が出されたのは2013年。その頃とはまたすごく変化があると思う。この10年、すごいスピードでネットが発達して、アーティストとして表現を発信することの難易度は下がった。事務所に所属せずに活動したり、自分たちで事務所を作るアーティストも増えた。リスナーも、サブスク、YouTube…コストをかけなくても世界中の作品にアクセスできるようになった。


ただ、チャンネルが増えて、選択の自由度が上がった一方、レジェンドをレジェンドだよねーって共有できなくなりつつある局面にいるような気がする。MORRIEの言葉を借りれば、"いいか悪いかは置いといて、それを知っておかないとモグリだぜっていう"、前提になる知識がないまま、その影響下にあるアーティストの作品を受け取っている状況にある。


リバイバルという動きへの反応がそれを物語っていると思っていて…というのも、あの現象って発信しているアーティスト側にはその時代や対象へのリスペクトがある。でも、それを受け取る側はどうだろう。


例えば80年代リバイバル、80年代に実際生きていた人たちがそこに立ち返って再評価するというよりは(もちろんそういう人たちもいるはずだけど)元を知らない若者にとって"新しい"、"新鮮"っていうふうに語られることの方が多くないですか?超〜〜〜嫌な言い方をすれば、触れてこなかった世代の「無知」により新しいものとしてウケている。で、ここで、あの表現のルーツはこの人たちなんだ!!っていう情報も出ればオールハッピーだけど、そうじゃないことも多々あり、親世代から「これってかつてあったアレやん、あんたちゃんと元祖知ってるんか??」って言われたりする…というわけです。



今は頑張らなくても…というのは自分から情報収集しなくても、新しいものにどんどん出会える。コストをかけずにたくさんの音楽にアクセスできるだけでなく、自動再生なる機能が好きなものと関連のある作品を次々提案してくれる。だから好きな音楽に新しく出会うのに、いちいち好きなアーティストに関して、これはなんていうジャンルなのか、どこの国の何歳ぐらいのひとたちなのか…なんてことを調べなくてもいい。ひとつのアーティストについて、どういう文脈で誰に影響を受けてきたんだろう?って深く知る機会は圧倒的に減っている。なんせそんなことしなくてもなんとなく好きな音楽に辿りつけてしまうから。


いいじゃん、便利じゃん!って思う?

でもわたしはいいことばかりじゃないと思う。この前Spotifyで"なんか知ってるけど何で知ってるのかわからない曲"が多すぎてビックリ、自動再生の弊害…!!と震えた。


アーティストにも曲も全然見に覚えがないのに知ってる。これって単純に名称を知らないけど、どこかで聴いた覚えがあって知ってる曲とはわけが違う。そういう場合は、例えばあの先輩が聞いてたやつだ、とか、小学校の下校の音楽だ…とか、たとえ忘れていたとしても何かしらの記憶、体験と結びついているし、外的な要因があるから。でも自動再生で知ってるだけの曲にはエピソードが欠落している。エピソード、いや、もっと言えばあなたの意思。


「自分が選んで聴いたAというアーティストに基づき、自動再生されたBに出会う」ところまではいいと思う(わたしも現在、自分史上最も愛しているバンドBUCK-TICKにその出会い方をしている)。けど、それが連鎖して行ったら、もはやあなたがきいている音楽はあなたの意思で選んだものではなくなる。何で聴いてるのかわからない、でも嫌いではないから聴いていたBを元に自動再生でまた知らないうちにCという曲を聴いている…それって誰が「聴いて」いるの?自分が聴いているのに自分の意思が不在というのはわたしはとても気持ち悪い現象だと思う。


音楽にはもちろん娯楽という面もあるし、「音楽が好き」ってきもちにも色々あっていい。もちろん知識なんか何もなくたって楽しめるのが音楽のいいところでもある。けど、誰かの表現であり、そうである以上、賛同する・しないという判断も常につきまとう。「どこかで誰かが流しているのを聴いた」以外の音楽は、本来は自覚的に選んで聴くものだってこと、当たり前すぎて忘れられがちだけど、いまは便利すぎてそれすら揺らぐ時代なのだ。


自分の好きなアーティストが誰のどんなところをリスペクトしていて表現の道に進んでいるのか、どんなルーツがあって今の表現に辿り着いているのか、それを知れば、好きなアーティストの作品をより深く味わってよりしっかり受け取ることができる。トリビュートでも、他の方法でもいいけど、そのぐらい本気で受け取ろうと思えるアーティストがどんな人にも1人はいてほしいな…


そんなわけで、音楽を聴くにあたり、系譜を広げる手取り早い参考書としてトリビュートアルバムを捉え直した話から音楽のききかたにまで話がおっぴろがってしまった、さーせん!


次回、「じゃあトリビュートをどんな視点で受け取れば楽しめる?真価を発揮させられる?」で終わります!!(まだつづくんかーい)

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