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MORRIE 『SOLITUDES I 孤絶の歌は天溶かし』


MORRIE のニューアルバム

『SOLITUDES I 孤絶の歌は天溶かし』


人生多分初めて、リリース日に店頭にCDを買いに行き、この1週間どっぷりと浸かっていました。


来週にトークイベントに行くので、その前にどうにか自分の言葉にしておきたかったのもあってちょっと性急すぎですが、出しておきます。




MORRIEがギター一本でステージに立つSOLITUDEのアルバムだということ&2022年リリースのセルフカバーアルバム『Ballad D』のイメージもあり、勝手にアコースティックなサウンド、シンプルな弾き語りを想定していたから、初っ端から全然違って混乱。けど、よく考えたらSOLITUDEのアルバムとはいっているけどどんなサウンドかとか言及されてない笑(後からインタビュー読むと、最初はギターと歌とで本当にSOLITUDEのようにしようと思ったけど単純すぎて違う気がして打ち込みを本気でのせたと言っていた)


そんなこのアルバム、音としては全然SOLITUDEとは違うけど、MORRIEが声とギターだけで立つ、SOLITUDEの表現の背景にどんな情景が広がっているのかがわかる。けど、ギターと歌のみ、削ぎ落とされているのにあまりに豊かなライブ、SOLITUDEを体験してしまうとこのずっしりなアルバムですら副読本のように感じられるのだからすごい。


それからMORRIEとの出会い、ベストアルバム『ectoplasm』(2005)を初めて聴いた時、シンセの音の変さは時代なのか、それとも本当に変なのかって戸惑ったけど、これを聴いて確信に変わりました。…本当に変な方でした!!




さて、ひとつずつ参ります。


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波の音、「Melancolia Ⅲ」で幕開け。もともとごくシンプルな声、ディレイのかかったギター、ドラムだったところにいろんな音とバイオリンが入って、キラキラした境界みたいなものが浮かんでいる神秘的な海辺に連れて行かれる。


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鳥のさえずり、砂を踏み締める音、

古びた木のドアを開け、コツコツと靴の音…


そして、不穏なチャイムのように完璧な空のリフが鳴らされる。それはチャイムなのか時計の音なのか、はたまた、なにかへの呼びかけか。


「Think Blue, Count Infinity」と題されたこの導入から「完璧な空」に流れ込む。


"空は大地を失い飛んでゆく それは空ではない"

天地も左右も、過去や未来の区別もなくなった無限の世界では


"明日のことさえ懐かしい"


ひっくり返ってしまいそうな歌詞がたまらない。


『ロマンティックな、あまりにロマンティックな』アルバムタイトルからしてニーチェの影響が伺える。この詩は27歳とかその辺の時に書いているはずで、言葉の可愛らしさはあるけど、もうすでにMORRIEの世界観の基本的なところは完成していたのですね。


キラキラ音が左右に細かく振られているのも集中して聴いてるとフワーってなってなんだか危険な曲です。


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新曲、「訣別」は音数の多さにびっくりする。一体いくつ音を重ねているんだ!?!?っていうくらいほんとうに色んな音がする…さらっと聴いて仕舞えばさらっと聴けてしまうんだけれど拾い始めるとすごい数。


月光の差し込む古びたお屋敷に忍び込んで各部屋に住まう亡霊たちを覗き見ているようなイメージが浮かびます(わたしのイメージは映画下弦の月のお屋敷…)。


MORRIEらしいのだけど、ABサビを繰り返しという曲展開じゃなくてABABCDEみたいな曲展開だから妙に宙吊りにされたまま終わってしまう。


そんで!最後のあのカラカラした音はなんでしょうか…?どこかの国の祭り?あるいは葬送の音なのかな?と想像するも…わからない!!


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「パニックの芽」は一番最初にVHSで発売された(というか相当後になってベストが出るまでそのVHSにしか収録されていなかった)MVと同じく雷鳴から始まる。


バイオリンのソロだったところがシンセになってるんだけど、このシンセの音がなんて言うかね…くすぐられますよね…何が?っていわれるとほら…わかるでしょ?ってなるんすけどね…でも元々のバイオリンもけっこう好きで甲乙つけ難い。


"一杯の紅茶を飲み干すうちに

傾いてゆく 外は土砂降り"


何度聞いても、ここに、コーヒーでも水でもお酒でもなく紅茶をえらんだの天才だなと思う…。


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4月京都MUSEでのSOLITUDEでたった一度聴いただけ、メロディも覚えてはいなかったのだけどこの曲が入ると知って嬉しかった「春」。


アルバム中唯一MORRIEの作った歌ではなく、佐井好子さんという方のカバーなのだけど、もう最初の一フレーズだけで酔いしれてしまう…。柔らかで滑らかな、肌触りの良い布に包まれるような極上の質感。


声はもちろん、ギターも素晴らしい。オールドスクールなロックも聴いてきているはずのMORRIE、わたしの知識が乏しいが故に的確なバンド名とか曲名が出せずに申し訳ないんだけど、ZEPとかジェフベックとか…あのへんのギターに通ずる心地よさ。


清春が自身のアルバム『SOLOIST』で、日本においては10年以上音沙汰なしだったかつてのMORRIEに頼み込んでギターを弾いてもらったときのことを振り返って「ギターの腕も知ってたので」って話してたけど、うん。うん。


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SFぽいというか、荒廃した都市というか、とにかく不穏な始まりに裏切られる様にやけにポップな「あの人にあう」さて、どちらが現実なのか幻想なのか?


『影の饗宴』(1995)の歌詞カードを見たら、"あの人に あの人に あう!"となっていて、この!マークについてちょっと考えてしまい、そのあと『SOLITUDES』の歌詞カードにはないことに気がついてちょっとにっこりしちゃったよね。


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「忘却白書」は若かりし頃のMORRIEを聴いている人であればニヤリとするはず。というのも、とてもいい意味で、あの頃のサウンドの変さがあちらこちらに見受けられるから!!


フィンガースナップの入るタイミングも、シンセの音、同じところに同じリズムで載せられてる音が複数色あることも。


そして原曲の吉田美智子さんも良いのだけど、今回のyukarieさんのコーラスの可愛らしさと色っぽさの絶妙なバランスよ…コーラスとは言いつつその声だけを追っても十分聞き応えがある。


けれど、かつ二つで一つ、いや、他のすべての音がそろって完成するように歌っている両者の、この互いへの信頼ありきの力の抜け方!!MORRIEが「調和への意志」という言葉を使っていたけれど、まさしく。


アルバム『Ignorance』から33年(!?)、けれど驚くほど、”歳を重ねた”というニュアンスがないのだ。YukarieさんだけでなくMORRIEの声も!!これにはかなりびっくりしている。


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「Disquieting Muse」こちらは『Hard core reverie』から。元々バンドセット+バイオリン+少しシンセ、割とシンプルだったけれど、シンセの音をかなり足してある。個人的にはこれは元々の方が好きかな…。けど、この音の音の入り方・切り方、予想し難いところでピタリと動と静が切り替わる感じってめちゃくちゃMORRIE節だなと思う。


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「Heaven」は『Ballad D』に収録のものが中東の煙たいバザールだとしたら、こちらはちょっとヨーロピアンなというか高貴な感じ。わたしはどちらかというと『Ballad D』の方がトリップできて好きだけれど、この曲に関してはDEAD ENDの『shambara』(1988)収録のものと、ぜひ3つ聴き比べて!!


わたしは最近の2つを聴いてから久しぶりに『shambara』を聴いたら青くてかわいくてニタニタしてしまった。けど、最近の2つに比べてリアルな切ない感情が乗っているのは間違いなく圧倒的に『shambara』。にしてもこの曲の色褪せなさはすごい。


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最後は悪夢も甘美な夢も、さまざまな景色を巡って海に戻ってくる。穏やかで永遠の漂う「epinoia」。かつての作品に比べて、ここ数年のものはとてもゆったりと詩が載せられていて、からだの中に流れ込むような、自分のからだが音に溶けてしまうような、そんな感じがする。


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春の佐井さん、もはやおなじみの粕谷栄市さんにしても、MORRIEが惹かれるものは結構怖いもの。そしてその空気はMORRIEの作品にももちろんとても色濃く流れている。


在るとはなにか、これ、と思っているこれは何か、考えると善悪の、この世の秩序の向こう側に出てしまう。それは「光る曠野」のもととなった粕谷さんの詩「歌」で描かれる、"長い黒髪の死んだ女をのせて、芒の野をどこまでも馬でゆく"であり、悪夢のような、カオスな、ただそうであるという、在るがある、だけの世界。そのなかに生易しくない凄まじい美を見出すのがMORRIEの姿勢な気がする。


そんなMORRIEの作品は、さもありなんと世界を形作る様に見えるたくさんのほんとうはないルールにがんじがらめになっている時には風穴であり、癒しとなる一方、あまりどっぷりと長時間浸かりすぎるとわたしの場合は現実が遠くなってしまって元気じゃなくなる。そのくらいのパワーがあるので気をつけられたし…



今回まだまだ、今のMORRIEで録ってほしい曲があって(あとは野となれ山となれとかね…)『SOLITUDES Ⅰ』ということで、この先も続編が出てゆくことを期待しています。




おまけ


Spetial Thanksのところに清春の名前があって、にっこり。今回のアートワーク、BUCK-TICKのアートワークでお馴染み秋田和徳さんなんだけど、MORRIEがハマりすぎそうで避けていたという秋田さんとやってみようってなったのは清春さんのおかげのようです。清春もMORRIE大好きだけど、MORRIEが「こうしたらどう?」っていう意見を1番聞くのも清春だよね。ほんとに知り合いでもなんでもないんだけど2人が出会えててよかったよ…と思います、本当に、心底、よかったよ…ありがと神様…。



トークイベントとサイン会、

とてもドキドキだけど楽しみです。

MORRIEさんに会える…!?!?ってなってる。同じ時代に生きられててよかった。

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