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LIVE Report「清春とリビドー」

清春とリビドー

2023.09.08 sun at京都劇場


残したいことの3割も言葉にできていないけれど、それでも残しておこうと思う。

2022年夏のBUCK-TICK、2023年春のMORRIEに続き、世界の色が変わってしまうライブだった。


今年の8月はDer zibet、ISSAYさんの突然の訃報で始まった。後からこの夏を思い返しても、きっと真っ先に思い出すであろう大きな喪失に「いつかみたい」が叶わなくなる日は突然、そして絶対に来るのだと突きつけられたようだった。


その悲しみがやっと少しだけ落ち着いた頃、わたしはみたいアーティストをリストアップした。もう同じ後悔をしないように。考えなくてもすぐに思い浮かんだうちのひとりが清春だった。


そんなタイミングで清春が京都に来る。しかも今回の公演はわたしが彼に出会った最初かつ唯一しっかり聴き込んでいた1枚、『JAPANESE MENU / DISTORTION』のアートワークの絵を手がけたやまなみ工房とのコラボ公演。初めていく清春のライブとしてこれ以上の好機はないような気がした。迷ったのは一瞬だった。


みにいくと決めたはいいけれど、清春の過去作はたくさんある。ソロだけでも10枚のアルバムが出ているし、黒夢とSADSのフルアルバムだけでもさらに15枚はある。1枚しかまともに聞いていない人間が20日程度で聴ける量では到底ない。そこにきて、とりあえずソロを新しい方から…と手を伸ばして2枚目のアルバム『夜、カルメンの詩』の「夜を、想う」「眠れる天使」があまりに良すぎて完全にそこで止まってしまってタイムアップ。


そんなわけで予習不足とやんちゃなイメージに若干ビビりながら会場に入り、タバコと香水の匂いのなか、開演を待つ。1時間押しもあるという情報をネットで見ていたので覚悟していたけど意外と20分押しですんなりとスタートと思うのも一瞬、スクリーンに映し出された絵たち、音楽、声の振動、いきなり全てが鮮烈で、全然受け止めきれない。この場にいながら逆にいないような、映像を見ているような感覚に。



構成はパーカッションとギター、ピアノ、管楽器で、ひとつひとつの音はジャジーだったり、スパニッシュだったり…ジャンルを超えていて、そうでありながら根底はめちゃくちゃロックンロール。音楽としての成熟、色々なもののミックスの絶妙なバランスが清春のスタイルとして確立されていて、それが素晴らしいのはもちろんなのだけどもうとにかく声。清春は声。知ってたつもりだったけどそれどころじゃなくて、本当に…凄いとしか言いようがないのだ。


MORRIEのSOLITUDEの時にも思ったけれど、声が振動であり波だという感覚、しかも清春に至ってはわたしの身体は清春の正面ではなくて2階席にあったのに、マイクを通した音ではなくてちゃんと声として判るというか。京都劇場の音響設備は全然声量に追いついてなくて、マイクをお腹くらいの位置に持っていてちょうど良いくらいだった。


ソロの1st「EMILLY」や、黒夢の「MARIA」、わたしでも知っている名曲もやってたけど、やはり直前にどハマりしていた『夜、カルメンの詩』と、先述の通りわたしにとってFirst清春でもあり、今回の公演の元にもなった『JAPANESE MENU / DISTORTION』の曲がやはりとても痺れたし、絵との相性がいいのもやっぱりこの2枚のアルバムの曲だったと思う。「アモーレ」「嘘と愚か」「グレージュ」「美学」「眠れる天使」…それから「洗礼」の”洗礼 洗礼”「survive of vision」の”This is all I have”というフレーズに関しては今も脳裏にリフレインしている。


でも、それらを超えて、心が揺らされたのが「saint」。知らないのに途切れ途切れに認識できた言葉のかけらだけで十分だった。しかも単純に”こんな曲あったんだ”って思っていたら、この秋リリース予定の新曲だった!!冷静に思い返してみても、当然と言って仕舞えばそれまでなのだけど、今の清春の魂が1番載っていた。もう1曲、演るのが2回目という新曲「ETERNAL」も…生き生きとした新曲をこうしてリアルタイムで受け取れることの幸せよ…


本編は一言も発さなかったけど、アンコール後に話しはじめたら途端にピリッと張り詰めていた空気が柔らかくなって、この辺からやっとわたしはここにいるって思えた気がする。


ブレスレットとマイクのシールドが絡まっちゃって「あの~すいませーん!これ…」ってスタッフさんにヘルプかましてたり「俺天才だと思うんだけどさあ…いい曲できた!って曲作るじゃん?自分の作った曲なのにギターわすれちゃうんだよね」ってギターの人にその場で逆に教えてもらいながら何かの弾き語りしたり「忘却の空」をちょっとだけやったりとお茶目なところもありつつ、1番印象的だったのは「55歳~60歳は今までの5年ごとの自分と絶対に何かが違う、この5年は本当にみていてほしい」。そう真剣に話していたこと。


その言葉を聞いて、BUCK-TICKやDEAD ENDの存在を知ってからわたしの中にずっとあった「若い頃から一緒に歳をとりたかった」っていう悔しさがちょっと変わった。今の彼ら、50代後半を迎えて深く熟した彼らを25歳のわたしで目撃できていること、ライブの前後で本当に見えるものが変わってしまうという体験をしていること、それは一緒に歳を重ねるのと同じか、もしかすると超えるくらいしあわせなことなのかもしれないと思えた。


そしておそらく清春のその言葉の裏には、体感の実感だけじゃなくて、今まで目にしてきた、MORRIEをはじめ彼の敬愛する先達の姿も思いうかべているはずだと思うとなんと言えばいいのか…とにかくグッと来るのだ。自分への確信と信頼があって、歳を重ねることのポジティブさを今わたしはその生き様で見せられているけど、清春もそういう人を見てきたからいまこういうふうに在るんだなというか。


ただ冗談めかしてとはいえ、「天国が近くなってきた」という言葉にはほんとうに”やめてくれ~!”と声が出てしまった。自身のお父様の亡くなった年齢まで生きていたいけど、それより前に音楽ができなくなるだろうということも話していたし、何より冷静に自分のことも客観視している清春、ごく自然にその感覚があるのがわかっちゃって寂しかった。


音楽は無くならない。けど、同じ時間・空間を共有するということの喜びはやっぱりお互いの肉体があるうち、ライブでしか味わえない。だからこそ、この場を共有していてそれが言いようもなく嬉しくて幸せだというのはこちら側はもちろんあるんだけど、この日、清春もそれを言葉にしてくれていたのもさらに嬉しかった。



そして最後、下劣でマイクスタンドをぶん回して(多分ちょっと控えめに)放り投げた後「なるようにしかならないから、たどりつく未来が最高でも最悪でも、後悔がないようにその日までsurviveしましょう」って去っていった。


ことばや表現が違っても、わたしの好きな人たちの言うことはいつも同じ。


終演後、大雨の京都タワーを眺めながら半泣きのまま忘れたくない感情をメモした。ここ最近、25歳、これでいいのかなあって悩むまではいかないにせよ、なんとなく考えたりもしていたけど、なんか吹っ切れた。かっこよくてかわいくて本当に最高な、大好きな人たちに会えるだけ会いたい。その姿を、声を、自分の肉体で感じたい。今のわたしにとって1番やりたいし、やっておかないといけないと思っていること。それがやれてるから大丈夫じゃんって。


行く前は1回はみておきたいなんて思っていたけど、また1人、何回でもみたい人が増えてしまったな。11月発売予定の新しいアルバム『ETERNAL』作品自体も楽しみだし、ツアーは絶対にゆきます。


今回唯一心残りだったのは2階席が誰も立っておらず、座ってみたこと。

こんなにもロックで、半端じゃない熱量を浴びてるのに、立ってみられないのがずっともどかしかったから、次はすごく後方でもいいからライヴハウスで、清春に見下ろされて、立って聴きたいと思います!!!


正直なところ、まだ全然消化なんてできていなくて、やまなみ工房の絵のことを簡単に、軽率にアートだね、なんて言えなくて、せめて映画「地蔵とリビドー」を見ないと今回の「清春とリビドー」がどうだったかということについては簡単に書いちゃいけないなって思っています。なので妙にスカッとしたレポートになってしまった。でも、とにかく、すんごかったの。すんごかったんだよ。

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