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MORRIE 『Ballad.D』2022


MORRIEによるDEAD ENDのカバーアルバム。とはいえ、セルフカバーといって仕舞うには勿体無い、DEAD ENDというバンドとMORRIE個人の魔力の質の違いとでも言いましょうか…曲はDEAD ENDのものでありながら紛れもなくDEAD ENDではなくMORRIEの作品なのです。


2009年の復活後のDEAD ENDのライブの映像は、何度か目にはしていたものの、わたし的には1990年の解散前に到底及ばず、一度か二度再生した程度だったし、その理由の中でもMORRIEの声、歌い方の変化というのは大きかった。


もちろんMINATOの不在(わたしが見た映像のサポートメンバーで入っていた山崎さんのドラムも素晴らしいのだけど、わたしにとってやはりSERAFINEはMINATOの音ありき)と、

かつてこのバンドが持っていた青い炎のような烈しさが落ち着いてしまっているように感じられたこともあるけれど。


だからこのアルバムにも当初そこまでの期待はしていなかったし、Serafineが公開された時、それまでと同じくDEAD ENDの曲として受け取ろうとしたがゆえに一度は手を放しかけた。


このアルバム『Ballad.D』は、2020年に亡くなったDEAD ENDのギター足立YOU裕二へのレクイエムでもある。MORRIEに欠かせない存在だったはずのYOUちゃん。リアルタイムで目撃できたわけじゃないし、好きになって日も浅いけれどそれでも、彼がいなかったらきっと何もかも違っていただろうことはわかる。SerafineはそんなYOUちゃんの傑作であり、DEAD END解散前最後のアルバム『ZERO』の、それもラストに納められている。何度でもいうけれど、わたしにとってこの当時のライブhyper.dは本当に神がかっているのだ、MORRIEの伸びやかな声も湊のタムの軽やかな重み(ムジューン、けどわかってもらえるはず)も、この上なく美しい。他の人々はおろか、本人たちですら、今がどうというよりあれが最高すぎてかなうわけがない。ずっとそう思っていた。


けれどMORRIEのソロ作品と同じく、少しの間、待つように聴いていたら、やはり突然にその時は来た。新しいSerafineのギターの孤高の美しさに取り憑かれてしまった!


ほどなくして、このあたらしいSerafineのギターがSUGIZOのギターであると知り、またスギ様じゃん…となったのはいうまでもない。MORRIE、YOU、そして曲そのものへ深いリスペクトを感じるプレイ。スギ様のギターはわたしの中でずっと青いイメージだけれど、そういえばYOUちゃんのギターも青みが強いかもしれない。


そんなわけでアルバムのトレーラーも試聴も何もなく、ただ一曲YouTubeにまるまる公開されたSerafineの美しさにすっかり虜になってしまったわたしはそれからひたすらそれだけをリピートし続け、サブスクでの配信もなさそうなことがわかって、久しぶりにタワーレコードに駆け込んだのだった。


やはりSerafineは別格に素晴らしいけど、櫻井敦司とくるみちゃんの部屋で哀愁のラテンと評されたEmbryo burningをはじめ、同番組で沸々とした情熱…という言葉で表されたように、かつて青く鋭かった楽曲たちがまるみのある琥珀色へ変化を遂げている!



Luna MadnessはYOUのギターソロだったところにMORRIEの語りが載り、原曲から大胆にテンポを落としたSleep In The Skyの虚空に吸い込まれてしまいそうな浮遊感、異国のバザールの中に紛れ込んでしまったようなHeaven、原曲よりさらに濃密に妖しく煙ったい空気に包まれるPromised Land。


アルバム通して基本的にはアコースティックなサウンドの中、ともすればこれだけ別アルバムだと言われても違和感がないBeyond The Reincarnationのエレクトリックなサウンドがキュッと締める。


"Ballad"の名がついていたから語りが多いのか…?という予想をしていたものの、語りパートもありつつ、けどあくまでも歌だった。


元々は思いきりメタルのSkeleton Circusのアレンジにはわたしの少ない知識の中で、メタルのアコースティックカバーとしての妙な正しさも感じて、ニヤリとしてしまう(これはわたしがフォークメタル好きなせいか…笑)。


I'm In A Coma、I Can Hear The Rain、メロディアスで湿っぽい2曲はアンニュイな雰囲気はそのままに、大人の翳った色気で満ちている。



そして、HeavenにはVAMPSやHYDEソロのオリエンタルでクールで風通しのいい哀愁にかなり近い雰囲気を感じる。第二期から収録された夢鬼歌もそうだけど、DEAD ENDや MORRIEのエッセンスを受け継いだ、ラルクや清春をはじめいわゆるヴィジュアル系(本人たちの認識はともかくとして…)の文脈のバンドたちが発見してきた音がぐるりと巡って今度はMORRIEの手元にある。その循環にグッとくる。


今のMORRIEに馴染む表現に生まれ変わった粒揃いのアルバムのラストはMORRIEのライフワークでもあるソロライブSOLITUDEでも最近は定番の冥合。原曲は9分越え、こちらも7分半とかなり長めなのだが、展開が物語的というか、映画を見ているような一曲で、なんというか、気がついたら終わっているのだ。砂漠や夜空、あるいは…芒の野。果てのない、圧倒的な風景の中にさらわれてしまう。冥合という言葉の意味は知らず知らずのうちにひとつになること。その名の通り、気がついたら聴いていたはずの曲の中にいて、そして音が止んでもこちらはその風景の中に取り残されている、そんな感覚になる。


今、CDやレコードを買わないと聴けない音楽というのは少々手を伸ばすのにハードルがあるだろうし(『Ballad.d』2023年6月現在は有料ダウンロードも含めてデータでの配信がされていない。公式の視聴できるトレーラーなどもない。非公式なものが最近上がった。)

馴染んでしまえば心地よいMORRIEの歌声は、とはいえ聞き馴染みがなければ癖があってはじめは少し抵抗があるかもしれない(わたしはもうその感覚を思いだせない)。けど手を伸ばし、少しだけ浸かって、その時を待ってみてほしい。このアルバムはあなたをどこか遠い場所へと誘ってくれるはずだ。

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