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230117 『★』


少し前、1月10日はデヴィッド・ボウイの命日でしたね。



忘れもしない。わたしは高校3年生でセンター試験まであと1週間…という時に届き、NHKのニュースがその晩どのニュースより大きく、トップで取り上げた訃報。


その2日前、3年ぶりの、そして最後となったアルバム『★』が発売されていたのが、より彼の死をセンセーショナルに見せていて、最後の最後までボウイは完璧にボウイだった…という、もはや使い古された、けれどそうとしか言いようのない文句も今だから思えることで、その時はただただ、何か大きな喪失ということだけを感じていた。


というのも、その頃のわたしはボウイに対してまだ今ほどの熱を持っていなかった。ボウイが好きなのはわたしではなくわたしの父で『Ziggy Stardust』や『Diamond Dogs』『heroes』あたりは小さい頃から耳にしていたし、高校生くらいになって父のiTunesを漁る中で『Reality』『Earthling』を好んできくようになっていた。けどもあくまでも音楽だけだった。(ミュージシャンにたいして知っていたのは音楽だけだった、というのも変な話だけど、David Bowieに関してはきっとそう反論はされないはず)


だから、彼の音楽はわたしにとって好きとか嫌いとかの土俵ではなくて、当然のように隣に「ある」ものだった。あまりにも自然にあったせいで、実は彼が亡くなり、テレビでジギーの映像が流されてほぼ初めて、わたしは彼を…見た目や振る舞いも含めたボウイを知ったのだ。

(家にあった楽譜の裏表紙で、山本寛斎の因幡の白兎ジャンプスーツを身につけたボウイは見ていたはずだけどなぜか全然覚えてなかった)


つまり皮肉だけれども、彼の死によってわたしは初めて彼に会うことができたというわけです。そして夢中になった。




『★』はボウイの作品の中でわたしがちゃんとリアルタイムで受け取れた唯一の作品。


だけど、最初にこのアルバムにあった時の気持ちを思い出して正直に言葉にしてしまえば、気持ち悪くて怖くて無理!!だった。とくに表題曲であり、11月の半ばに先行シングルで発表されていた「Black star」どのように受け入れたらいいのか、ぜんっぜんわからなかった。


好きなアーティストの久しぶりの作品をワクワクして待つ父が、当然だけどこの曲を学校の行き帰りの車中で何度も流すのを止めたいくらいに嫌だった。聴いているだけで何か怖いものが寄ってくるのではないかと怯えていた。ミュージックビデオも怖くて気持ち悪い以外の感想を持てなかった。


彼が亡くなり、時間が経った今ならあんまりに色濃い死の匂いが、それからわたしには馴染みのないキリスト教圏の宗教観の根底にある暗さが、その受け入れ難さの元のひとつであるというのがなんとなくわかるし(とくに高校生のわたしには今以上に死はあまりに遠く、恐ろしいものだったはず)、ボウイらしい最期だと思えるからまだ救いがある。けど「Black star」が発表されて彼が亡くなるまでの半月ほどの間は特に、それからもボウイに夢中になってあろうことか卒論のテーマにし(無謀!笑笑)、最後の最後に『★』を聴けるようになるまで、訳がわからないままわたしの中で戸惑いは続いた。




今、わたしはこのアルバムを聴くことができる。ただし「Dollar Days」「I can't give everything away」の2曲を聴く時以外は、アルバムを最後まで通して聴くというマイルールを作っている。


ブラックスター、死にゆく星の姿を冠されたアルバムにはやはり死というテーマが一貫してあるけれど、それは決して負のイメージだけではなくて、その前提にある生も含めて神秘的なものでもあるし、老いや死の受容、穏やかでおおらかな諦念でもある。ボウイの作品に共通してある問いかけも含まれている。


けどやっぱり「I can't give everything away」をきいて、さぁわたしどうしよっか。気合い入れよ!!という気持ちになって終わらないとわたしは沈んでしまう。


その意味ではこのアルバムへの戸惑いは7年経っても、かつてほどではないにせよ、まだ続いているし、きっとこれからも続くのだと思う。


他のアーティストも含め、そこまでの力があるアルバム、今のとこ他には浮かばない。ボウイを好きになった時にはもうこの世にいなかったこと、とても悔しかったしこれからも悔しいけど(何度でもいう、Reality tour の日本公演、行きたかった!!わたし6歳!!ヘッッ!!)『★』を物心ついた状態でリアルタイムで受け取れたことはとても幸せなことだったなと思う。



そしてそう、このアルバムが発売された2015年1月8日は彼の69回目の誕生日だったのです。


ちょっと若すぎたけど、最後におめでとう!とさようなら!を目まぐるしく盛大にやって去っていったボウイの生きざまに乾杯。

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