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MOON CHILD  2003

~story~

 2014年、経済崩壊した日本からは移民としてたくさんの人が海外に渡っていた。発展途上のアジアの都市、マレッパでもマフィアが牛耳る街で親を殺された移民2世の子たちがストリートチルドレンとして暮らしていた。

 そんな子供の1人だったショウ(GACKT)たちのねぐらに、ある日バンパイアのケイ(HYDE)が現れる。ショウは太陽の下に身を投げ出し、死ぬつもりでいたケイを助けるが、そこにショウたちを追うマフィアの男が訪れる。渇いていたケイは男を殺し吸血。兄シンジは逃げ出したが、受け入れたショウはケイと一緒に暮らし大人になる。

 

 ある日撃ち込みに行ったマフィアの事務所で、妹の仇討ちに単身で乗り込んできていた男、孫と鉢合わせ、そこで組んだことからショウたちと孫兄妹の友情が始まる。でも楽しい時間はずっとは続かない。ただ一緒に笑っていたい。それだけだったのが、大人になるにつれ組織やコミュニティ、立場、そういうものにがんじがらめになってバラバラになりすれ違っていく…

 

 

 人生で最も再生している大好きな映画。最初はGacktとHYDEが出ているから見ていた。HYDEはほんっとうに、歌っている時のあの鮮やかな表現力どこに行った!?っていうくらいお芝居は大根で、寺島進やトヨエツ、大物の俳優たちの上手な演技が逆に浮いて見えるほど。完全に美しい2人を見たいがために再生しては「ウッ…やっぱりひどい…」とかなっていたはずなんだけど、いつの間にか耐性がついて今じゃあすっかり物語に没頭しています。深く没頭できる物語に出会った時、読みたいとか見たいではなく、会いたいという感覚で本を開いたり映像を再生したりすることがある。わたしにとってこの映画はそういう物語なのです。今はもう、GacktとHYDEではなくて、ショウとケイに会いたい。

 

 寂しさを抱えたまま大人になって、気持ちと行動がちぐはぐなショウ

 お調子者だけどさりげなく皆をフォローするムードメーカーのトシ

 いつも皆を一歩引いて見守りつつ、自分が大事な人たちと違う存在であることをずっと恨んでいる

 誰より年長だけどどこかとても純粋なケイ

 皆がうまくやっていけるようにとの思惑がありつつ、

 誰にもその意図を伝えないまま黙ってひとり仇の組織に加入した孫

 はちゃめちゃなメンズたちに巻き込まれつつも皆を繋ぐ存在になるイーチェ

 ダメダメな兄シンジとショウの関係も、唯一の肉身だけど、そこにはすごい葛藤があって

 それぞれとても愛おしい。

 

 

 そしてこの映画、ヴァンパイアだマフィアだというフィクション要素だらけなのに、妙なリアルさがある。小説「MOON CHILD 鎮魂歌篇」で物語のバックグラウンドを知ると余計に今の世界や日本の状況と考えられる行く末のひとつとしてあの世界がリンクしてしまう。民族の意識が原因の諍いだったり、腐敗した政治だったり。「MOON CHILD」で描かれるのは、そういう大きな波が、ちいさくてもたしかに血の通っていたはずの関係をねじ曲げてしまって、かつての友人同士が銃口を向け合う結末。考えられうる中でもかなり最悪のシナリオだけれど、最近のニュース見てるとあり得なくないなとか思ってしまう。大好きな映画だけど、どうかそんな未来は避けたい…って思っていたら戦争になってしまった…。

 

 

 台湾で撮影された今作、単純に世界観も好き。街の様子や部屋の内観も可愛いし、衣装にたくさん登場するゴルチエのカットソーがこれまたダサ可愛いくて(褒めてる)それも良いです。

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