清春
清春の名前もヴィジュアル系の文脈のアーティストということもずっと前から知っていたけど、黒夢もSadsもきちんときいたことなくて、なんならよみかたが「くろゆめ」なのもつい最近知ったという有様ですが、SUGIZOのアルバム『ONENESS M』をきっかけに、少しずつ手を伸ばしているところ。
珍しくほとんど映像にはアクセスせずに曲だけ聴いてる。なので黒夢は首つったり血みどろになったり、ライブパフォーマンスが過激だったってことは情報では知っているけど、わたしにとっての清春はやっぱりあのアダっぽくて、けどサバサバしてる声、歌い方。清春はたびたびMORRIEへの憧れを語ってるけど(清春のMORRIE大好きエピソードはほんと山の如く出てくるし、この人本気で好きすぎてついにはMORRIEのアー写スタイリングまでしている笑 可愛い。そしてそのアー写、とってもいいです!)わかる。どちらもキャッチーでありながらも唯一無二な声の持ち主、声だけで刺さるボーカリスト。しかもこれまた昔より最近の方が好きです。HYDEもあっちゃんもそうだけど、歳重ねて声の質感の尖ってがさがさしてたところがしっとりするというか。勢いは確かに若い頃の方があるのだけど、それが穏やかになった分、細部まで神経が行き渡っていてかつてはなかった艶に不意に出会ってどきりとするというか…とにかく色気が増している。
で、いざ当時の、「BEAMS」とか「少年」とかのMVをみてみると、全然(わたしの知っている)ヴィジュアル系じゃないじゃん!?ってなって混乱しました。でもヴィジュアル系のファッションのフォーマットとして黒服が出来上がりつつあった中、それを破るということそれ自体がもともとのヴィジュアル系のロックな精神だったんだって知ったあとは納得してます。
…これを書きながらなんでわたし清春はあまり映像見ない(欲しない)んだろう?って考えたけど、アダという言葉でしか表せないように、人間ぽさが強いからだなっていう結論に至りました。わたしがつい映像をみてしまう皆様はどこか人間離れしているというか、存在感が俗との距離があるように見えるというか。清春は妖しさというよりワルっぽさだよね。めっちゃ人間。
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『JAPANESE MENU / DISTORTION 10』2020
清春ソロ最新作のアルバム。実はベースレスなのだけど、それを忘れて聞き入ってしまう、なんなら重さすら感じさせるロックなサウンド。それを知った時はバンドじゃなくてもめちゃくちゃロックになるんだ!って興奮しました。音楽自体もそのトライもかっこいい。
アルバムジャケットおよび「SURVIVE OF VISION」のMVや衣装はアウトサイダーアートのプロジェクトDISTORACTIONとのコラボレーションで生まれている。最初、どういう経緯で?とちょっと疑ってしまったのだけど血の通った、という表現が適切なのかは分からないけど、きちんと実感のある文脈も意図も、そうすることで認知が広がる可能性があるって自負もあってのことと知ってストンと腑に落ちました。
わたしが調べてすぐに納得できたみたいに、清春は雑誌やネットのインタビューへの露出が割とあるんだけど、それらを読むたび、自分の頭の中にある主張や、なぜこの表現にしたのかということをフォロワーにもそうでない人にも伝わる言葉で説明することがものすごくきちんとできるアーティストだなと思う。でも曲自体のことに関しては投げておいてくれるし、自分の正義を押し付けるわけではない。
V系の出自であることを自覚した上で黒服を脱いだ若き日のエピソードもそうだけれど、尖っているし、やりたいことをやっていくけれど同時に常に、客観的に冷静に自分の立ち位置を見定めているというか。ワルっぽいイメージだけが先行してたけど、知っていくと本当に頭が良いのだろうなあと思わずにはいられない。